GiFT monologue-11「コーチングとカウンセリング」

コーチングとカウンセリングは違う。2003年当時、コーチングの黎明期には、この区別は大切でした。

「コーチングは未来を扱い、カウンセリングは過去を扱う」「コーチングの目的はプラスの状態を更にプラスにすること。カウンセリングの目的は、マイナスの状態をゼロに戻すこと」「コーチングは健康な人が対象で、カウンセリングは精神的に何かしら問題を抱えている人が対象」など、日本でそのようにトレーニングをされました。

私は2008年にカリフォルニアにある大学院でカンセリングサイコロジー(臨床心理学)を学ぶ機会に恵まれたのですが、そこでのカウンセリングは、日本で聞いていたものとだいぶ違っていました。

・「コーチングだけでなく、カウンセリングも心身ともに健康な人のものでもある」
→心理カウンセリングは、フィットネスのジムに行く感覚で通うものでした(心のフィットネスです)。

・「カウンセリングは、過去だけでなく、“いまこの瞬間”をも扱うものでもある」
→ ゲシュタルトセラピーなどはその典型ですが、いまこの瞬間の感覚を扱い、深めていくものでもありました。そもそも過去と現在と未来の時間の区別が恣意的なものです。今この瞬間の感覚に、過去も未来もすべてを含まれているという考え方やアプローチの存在は、私には非常に説得力がありました。

・「カウンセラーはログを取らない」
→少なくとも、私の学んできたコーチングではログは非常に重要でした。しかし、カウンセリングでは、あくまでもカウンセラーが自分用にメモとしてとる程度でしたし、そもそも、クライアントにとってログを取ってもらう理由がありませんでした。それ以前に、カウンセラーが目の前の人に全力で向き合おうとしたら、ログはなかなかとれないものなのかもしれません。

・「カウンセラーは、クライアントとプライベートな関りを一切持たない。食事にもいかない。バースデーカードも送らない」
→臨床心理学では、転移や逆転移という現象があります。これは非常に興味深い、且つ重要な概念です。セッションに余計な影響を及ぼさないためにも、あるいは、二人の間に、セッションとは関係のないダイナミズムを持ち込ませないためにも、その節度は重要とされていました。

・「カウンセラーはクライアントをリードしない」
→コーチングでも同じように言われていますが、カウンセリングのセッションにおいては、そのレベルは桁違いに高く、深く、且つ、洗練されていました。コーチングでは、「リードしない→アドバイスしない→だから質問する」程度の流れでしょうが、カウンセリングでは質問もリーディングの一つです。ですから、カウンセリングでは、コーチング以上に、カウンセラーのBeingが問われました。

ちなみに、私の通っていた大学院は、深層心理学と言われるジャンルです。アメリカでよりメジャーな認知行動心理学であれば、その内容は、もっとコーチングに重なってきます。というよりも、心理学の方が歴史が長いので、コーチングがそちらから、自らに合うセオリーを持ってきているというのが正しい認識だと思います。

いま、それぞれに多様な広がりと可能性を持つコーチングとカウンセリングの世界の両方の良さをビジネスの世界と文脈で融合させていくこと。これがGiFT partnersの目指すアプローチです。