観察する力

「答えがない時代」と言われている。より正確には「正解がない時代」なのだろう。ビジネスの現場でも教育の現場でも、参加者が、もし本当に「答えがない」と分かっている問題に向き合わされているのだとしたら、大いに徒労だろうから。
 
なぜ「正解がない時代」なのか。それはVUCAの時代だからと言われている。VUCAはもともと軍事用語だ。戦場のように状況が目まぐるしく変わる中で、一つの正解はない。それは企業環境も同じだ。たくさんの「解」があり得る。その中で、素早く状況判断をして、頭を使って自分なりの納得解を作り上げろ、ということなのだろう。
 
では、「自然科学」の分野ではどうなのだろう。おそらく、「解」は一つしかないのではないか。「解」とは、要は、目の前で起きている「結果」「事象」のこと。目の前にあるファクトは一つ。そのファクトがなぜ起こったのか、なぜそうなのかを解き明かして行く。おそらく、他の多くの人が通常の景色として見過ごしているファクトや事象に気づいて、「それはなぜか」と「問い」を立て、向き合い、探究していくことが求められる。研究者や科学者は、そうなのだろう。

彼らのベースとなるものは、いったい何なのか。

一つは「好奇心」であり、ワクワクだ。昨年、ノーベル物理学賞を受賞した真鍋氏が繰り返し言っていた「curiosity」とは、そういうことだ。

少し前になるが、SDGs関連の本を読んでいる時に、面白い記述に出会った。「SDGsは新しい時代の問題集。そこには答えしか書かれていない」。つまり、解かれることを待っている17の課題が羅列されている。その課題は、さらにターゲットとして169に分類されている。それを測る232の指標まである。それらをどう解決し、達成するのか。解き方はこちらに任されている。要は「解き方は自由、問の立て方も自由」ということになる。求められているのは、アントレプレナーシップだ。

改めて、この瞬間において私たちの目の前に広がっているのは、「結果」だ。つまり、何かしらの「解」だ。

それなのに、なぜ経営学、つまり、社会科学の分野では「正解がない時代」というのだろう。それはおそらく、状況、つまり「解」が変化していくから。だから、なぜその解なのかという理由も変化していく。戦場や市場や社会もそう。ものすごいスピードで変化をしていく。そこでどうすれば勝てるのか、ヒット商品を飛ばせるのか。そこに正解はない。だから、ある程度、過去のセオリーは大事にしながらも、現実に合わせて、高速でいろいろ試せ、サイクルを回せとなる。特にマーケティングの世界はそうなる。

自然科学と経営学などの社会科学とでは「解」の捉え方が違うということだろうか。

社会科学的な実社会で必要なのが、起業家精神、ベンチャーマインドだ。

話を少し戻すと、起業家は、おそらく社会が動いていく中でそれまでの”常識”とのズレを感じる。あるいは、新しい科学技術が生まれて、これまでのルールが変わるであろうことを感じる。誰よりも早く。そして、新しい世界や市場が広がっていくのが、本人には見える。最初の引っ掛かりは違和感であり、「モヤモヤ」だ。そして、その先に広がる見える世界に「ワクワク」する。
 
研究でも企業でも、大切なのは「ワクワク」と「モヤモヤ」、つまり「好奇心」と「違和感」だ。「好奇心」については、昔から学校でも「好奇心を持て」と言われてきたし、今の時代には「モヤモヤ」を持つこともポジティブに大切になる。では、どうしたら、好奇心と違和感を持てるのだろう。
 
そのベースになるのは…、
 
ひとつ前のブログの内容にも重なる「観察する力」だ。言い換えると、観察をすることによって「(何かに)気づく力」になる。立ち止まって「外部の事象を観察する力」。それを見て、自分が何を感じているのか「自分の内面を観察する力」になる。
 
では、「観察力」や「内省力」を高めるにはどうすればいいのか。
  
マインドフルネスや瞑想はそこにダイレクトに切り込む方法になるのだろうし、私がアメリカで学んだインテグラル・カウンセリングも、そこを大切にしていた。クラシックなコーチングは行動やゴールにフォーカスするが、インテグラル・カウンセリングの流れも汲むGiFT partnersのコーチングは、「自己探求」と「自己深耕」を大切にしている。