アメリカでの3年間の大学院生活を終えて、日本には戻らず、バックパックを背負って約2年間の世界一周の旅に出ました。正直言うと、コーチングと世界一周の旅に、何の関係もありません。ただ、いま振り返ってみると、2つの経験は深いところで繋がっているのかもしれないと思うことはあります。
一つは、旅には孤独の時間がたくさんあります。いま思えば、この時間こそが自分を深める掛けがえの無いものでした。孤独こそ、旅人を成長させてくれる隠れたレシピだと思っています。閉じこもるのではありません。自分を開いて、孤独を受け入れて、そこに真摯に向き合うということです。もちろん、周囲に誰かいれば話しかけて触れ合いを楽しむのがいいでしょう。ところが長旅の中では誰もいない時もあるのです。例えば、電車待ちの時間が8時間もある。長距離バスを使っての移動に2日間かかる。乗客のほとんどいないフェリーで4日間移動する。ゲストハウスに宿泊客が自分一人しかいない。それは、自分と向き合い、自問自答を何度も繰り返す貴重な時間でした。人は、自己を深めた分だけ、相手とも深い部分で繋がることができるのです。「カウンセラーは、クライエントを映す良い鏡でありなさい。そのためには、自分を良く知りなさい」とは、大学院のプロフェッサーから良く言われた言葉でした。
二つ目は、自分の内なる声に従うということです。旅は、意識的な“選択”の連続です。どこに行くのか、どこに泊まるのか、話かけるのかかけないのか、信じるのか信じないのか。その日々が、自分の内なる声を聴く耳と感受性を育てます。いろいろあるのですが、一つだけ。私は「この旅をもう終えてもいいだろう」という自分の内なる声をキューバのハバナで聞きました。とてもとても小さな、でもクリアな声でした。不思議な感覚でした。お金が無くなったから日本に帰る、保険が切れるから旅を終える、何かを終えたから旅を終了する、というような外側基準ではなくて、本当に自分自身の声を基準に旅を終えることができました。これは、ひそかな誇りです。変な言い方ですが、コーチングのセッションにおいても、クライアントと向き合いながら、自分自身とも向き合っています。そして、常に、自分の内なる声の囁きに耳を澄ませています。
長くなったので、今回はこの辺りで。ちなみに、GiFT partnersのウェブサイトで使われている道の写真は、私が旅の中で撮ったものです。