「十牛図」とコ―チング

コーチングセッションでは、フレームワークは一切用意しない。そして、クライアントは時々の話したいテーマ・トピックスを話したいように話す。コーチに求められるのは、“問う鏡”であること。しかも、クリアで本質的で、時に深く共鳴する”鏡”であること。

 
思うところがあって、「十牛図」を10冊ほどまとめて読んでみた。「十牛図」とは、禅の悟りに至る修行のプロセス、生き方のプロセスを10枚の絵と詩と文で説いたものだ。ある意味、フレームワーク、と言えるかも知れない。

 
それぞれの本では、僧、学者など多様なバックボーンの人たちが解説をしてくれて、シンプルな詩と文と、絵とその連なりの多面的な理解と洞察を助けてくれた。

 
読み進めながら感じたのは、コーチの役割は、10枚の織りなされるドラマの中にあるのではなく、あの円い「窓枠」の方にあるのかも知れないと言うこと。コーチとは、クライアントの成長と深化という文脈の中で、クライアントの変容の物語を克明に写し出す鏡なのかも知れない。その立場に立つと、十牛図をまた違った読み方ができるかもしれない。

 
「よい鏡であれ」とは、臨床心理学をアメリカの大学院で学んだときに、プロフェッサーたちから異口同音に述べられたことだった。カウンセリングとコ―チングは、似て非なるものだけれど、重なる部分もある。改めて、クライアントにとってのよい鏡でありたいと思う。