経営者はどう学んでいるのか

ずっと昔、東京銀行の行員だったころ、頭取の高垣佑(たすく)氏が、何かの行内インタビューでお勧めの本を尋ねられて、「本は読まない。雑誌を読む」と応えていた。これもまたずいぶん昔、評論家の立花隆氏も同じようなことを言っていたことを記憶をしている。「人が頭で考えたものよりも、先端のジャーナルの方が面白い」。己の思考のプロセスを堅固に確立した人には、自らの論に役立つファクト・情報があればいいということなのかもしれない。でも、ちょっと寂しい気がしたことを覚えている。
 
さて、その話と繋がるかどうかは分からないのだけど、時々、クライアントから尋ねられる質問がある。その一つが今回のタイトルだ。多忙な中で他の経営者はどうインプットをしているのか。せっかくなので、コロナ禍のセッションで、何人かのクライアントに尋ねてみた。
 
・朝5時に起きて、自分のインプットの時間に充てている(そこには、目で読む読書以外に、耳で聞く読書や英語などの勉強も含まれる)。
・幹部会などの定例ミーティングの時間をインプットの時間として捉える。それぞれから情報取集をしている。単に報告やアウトプットの場所に終わらせない。
・貴重でインパクトのある情報は、経営者仲間からもたらされることが多い。経営者の団体に所属し、集まりに顔を出し、繋がる。そして、情報交換を積極的にする。
・ワンクッション離れた関係から、質の高い情報がもたらされることが多い(知人の知人、という関係にある人)という研究データがあることから、そういう人を決めて、定期的に会う。
・自分とは直接関係のないお客様とのミーティングの末席に出席させてもらう。現場の最先端で何が起こっているのかを知る。ミーティングの最後に、そのお客様と会話を交わす。
 
確かに、読書家が多い。しかし、どの本が面白い、良いという情報も、経営者のネットワークから手に入れていることが多い。そして、彼らの読書は、ビジネスに役立つ、仕事にメリットがある、というような目的意識が非常に強いものになっている。月に何冊と決めている人もいるし、書籍代の(例えば1500円の投資)に見合うリターンは何か、と言う明確な意図を持って読書に臨んでいる。
 
自分のビジネスに関係する質の良い情報を仕入れて、実践に活かす。彼らは、教養を育む、人間性を深める、見識を積む、あるいは、何かの合格のために記憶する、みたいなものとは異なる質の”勉強”を、日々、モーレツにしている。