企業経営で「パーパス」が注目されています。
その背景はシンプルで、SDGsや持続可能性への興味関心が高まっていること。そして、資本主義に先行き不透明が出てきている中で、企業が自らのあり方を再定義する必要が出てきているからです。GiFT partnersのクライアントでも、「パーパス」を軸に価値観の再構築に取り組んで成果を上げている企業があります。
多くの企業は、すでに独自の価値観体系を持っています。ミッション、ビジョン、バリューズetc、呼び方も定義も色々です。そこに新たに「パーパス」を加えようとすると、混乱が起きます。
一番多いのが、「ミッションとパーパスはどう違うのか」と言うことです。ここを突き詰めると「なぜパーパスが必要なのか」という問いを深めていく必要が出てきます。
「ミッション」は、使命です。その意味としては「社会に対する存在意義」「社会の中で果たすべき役割」です。その表現の中に、ビジネステーマを併せて謳うこともありますが、定義としては「パーパス」と似ています。
さて、
多くの欧米の企業が掲げるものに、「ミッション・ステートメント」があります。実は、そこでは「ミッション」と「パーパス」が、ステートメントの中に同時に書かれているものがほとんどです。つまり、「我が社は、このパーパスのために社会に存在し、このビジネスを通してこの社会的課題を解決し、こういう社会作りに貢献をしていく」と言うことが述べられていて、それがミッション・ステートメントと呼ばれているのです。
だから、通常は「ミッション」の中に、多かれ少なかれ「パーパス」の意味は反映されていると思って差し支えありません。
では、改めて、なぜ今「パーパス」が注目されるのでしょうか。それは、企業活動も社会活動である、という認識が普通になっているからです。社会課題を解決するために企業活動はある。企業はビジネスを通して社会課題を解決していく存在である。昨今の気候変動などの環境問題を考えると、地球の資源は無尽蔵であると言う前提に立ち、売上・利益、あるいは人類の利便性だけを追求していくだけでは、社会からの支持を得られないのです。
ちなみに、ビジネスという社会活動と、売上・利益は対立するものではありません。両立させるものです。そのビジネスモデルを作ることが起業家や経営者に求められています。創意工夫により経済性が成り立つ領域は、全てビジネスの領域ということです。経済性がどうしても成り立たない領域は、国やNPO、ボランティアの役割になります。
話が逸れてしまいました。
以上のような背景があるから、「ミッション」ではなく、よりシンプルな「パーパス」という言葉で、自分たちの存在意義を社会に発信していく必要が出てきたということです。自分たちは、なぜ社会に存在しているのか。自分たちの存在意義は何か。ものの本によれば、パーパスは「Why」を説明したものだと解説されています。
では、「ミッション」と何なのでしょうか。「ミッション」には、「ビジネステーマ」が入ってきます。「ビジネステーマ」とは、自分たちの「コア・コンピタンス(中核となる強み)」のことです。だから、通常、「ミッション」の構造は「私たちの会社は、このビジネステーマを通して、こういう社会作りに貢献していく」となることが多いです。そして、このセンテンスの「こういう社会作りに貢献していく」の部分が「パーパス」と重なってくるのです。だから、パーパスとミッションの定義や違いに混乱が起きることがあるというのが、筆者の見解になります。ちなみに、ミッションは「What」を説明したものと書いてある本があるのは、「ビジネステーマ」に着目したのでしょう。
「パーパス」も「ミッション」も、どちらも大事です。それぞれのエッセンスがあるのであれば、表現は分けてもいいし、一つにまとめてしまってもいいのだと思います。
ちなみに、「パーパス」は「実現するもの」ではありません。「パーパス」は起点です。だから目指すも何も、既にそうなのです。「パーパス」は、濃度や純度を高めていくものになります。英語でも、「パーパス」にフィットする動詞はなかなか無いようです。「ミッション」ではあればaccomplish、「ゴール」であればachieve、「ターゲット」であればreach、「ビジョン」であればrealizeなどでしょうけれども。それぞれの価値観の意味の違いを考えていくときに、あるいは現場での浸透を図るときに、「動詞」の違いは意外に重要になってくる区別です。