GiFT monologue-23「問いと質問」

コーチやファシリテーターは、「問い」を立てることが仕事のようなところがあります。では、そもそもコーチングやファシリテーションで言う「問い」とは何でしょうか。

例えば、「質問」と「問い」との比較で見ていくと…、

・英単語では、「質問」はQuestionで、「問い」はInquiryです。「質問」はベクトルが相手に向かいますが、「問い」はベクトルが自分にも向かいます。

・「問い」は、「質問」と違って「答え」を前提にしていません。だから、「質問」は、相手からの答えが無ければ気まずいですが、逆に「問い」は、それに続く沈黙にこそ意味がある場合が多いです。

すると、「問い」の目的は何なのでしょうか?

・「問い」の目的は共有して、深めていくことです。だから、相手からの回答が無い場合でもOKなのです。

・「質問」は、思考が正解を求めて過去(の記憶)を辿る一方で、「問い」には未来志向なところがあります。つまり、共有しているこの場この瞬間から、自分なりの考えを未来に向けて生み出す、それを促す働きがある、と言えるかもしれません。

・経験上、良い「問い」は、「質問」と違って事前に作る、あるいは用意することが難しい場合が多いと感じています。というのも、良い「問い」はライブで、目の前の人との対話や場のダイナミズムの中から立ち上がってくるものだからです。例えば、ある人のある発言やコメントがあったとします。「問い」は、その内容(枝葉)に対してではなく、根本に向かいます。つまり、そのコメントや発言が生み出されているその人の軸(生き様や在り方や価値観)に向かいます。相手の寄って立つ軸が、相対するコーチや、その場にいるファシリテーターや参加者の軸と共振することで、あるいは、逆にぶつかることで火花が散って、その場に「問い」が立ち上がる。そんなイメージです。

・そこで生まれた「問い」は、お互いの奥深くに真っすぐ向かいます。だから、そこから交わされる両者の対話は力を持ちます。頭で考えて「答え」を出すというよりは、体全体で「問い」と向き合う感じになるので、しばしば沈黙が生まれます。それは緊張感のある沈黙です。シーンではなく、キーンという張り詰めた音がするようなイメージです。

・1on1のセッションで、本質的な深い「問い」が立ち上がる時、相手の表情も息遣いも変わります。対話のペースも変わります。頭の中にある引き出しに既にある言葉を探(さが)しに行くよりは、心の奥底に、未だ無い言葉を探(さぐ)りに行くような感じです。もし、相手がその問いに向き合うことなく、自分の弱さや痛みに直面することを避け、その場しのぎに回答しようとすると、呼吸は浅くなります。時に饒舌になりますが、その声はとても軽いです。

以上のように、本質的な「問い」には、クライアントの在り方を深め、モノの捉え方をシフトさせる力があるのです。

さて、いま改めてみなさんにお尋ねします。
最近、何を問い、何を問われましたか?