ダイバーシティの価値

11月30日(土)、早稲田大学の井深大記念ホールで催されました「博士課程教育リーディングプログラム フォーラム2019」にファシリテーターとして、参加をしてきました。フォーラムには日本各地62拠点の博士課程で学ぶ学生150名が集い、「自身の研究はSDGsの各目標にどう繋がるのか。その目標達成に向けてどう役立てることが出来るのか。そして、SDGs達成後にはどんな社会を実現したいのか」を話し合いました。
 
学生たちは、各分科会の中でSDGsの目標ごとに、それぞれ7つのグループに分かれて、SDGsの2030年のビジョンとそこに向けた提案をまとめます。3つある分科会のうち、使用言語が日本語の分科会が2つ、英語の分科会が1つでした。私は使用言語が英語の分科会を担当させて頂きました。参加者の約5分の4が世界各地からの留学生でした。その一方で、日本語の分科会は、9割以上が日本人でした。
  
それぞれの教室で素晴らしいディスカッションが行われたのですが、英語を使用する分科会のダイバーシティのパワフルさを感じたのは、発表内容をまとめるための中間フィードバックの時間です。発表内容をプレゼンテーションして、お互いにフィードバックをします。英語の分科会はメンバー構成が多国籍なので、他の二つの日本人の分科会に比べて、内容への質問やフィードバックの量はもちろん、そのバラエティが圧倒的に豊富でした。それぞれのチームは、そのフィードバックを提案内容に反映させるので、日本人だけのグループよりも内容が段違いにブラッシュアップされ、且つ、提案内容が普遍性の高いグローバル仕様に洗練されます。
 
彼らの質問やフィードバックで唸らされるのは、それぞれのチームの提案の“暗黙の前提条件”への質問やフィードバックです。
  
「5.ジェンダー平等を実現しよう」については、女性の社会進出だけが問題なのか?アフリカの自分の国では内戦で男性が減った影響もあり、既に女性は社会に進出している。だからこそ、男性の力、男性にしかできないことがもっと必要とされている。そう言う国があることも踏まえて、提案には男性視点、あるいは女性視点の一方から、相手を見るのではなく、両方の視点から見た内容が必要なのではないか」
 
「10. 人や国の不平等を無くそう」については、先進国と途上国の間の不平等を是正することはわかる。しかし、途上国一つの中を見ても、収入などの貧富の差はもちろん、都市と農村の差、ジェネレーションの差、教育の差etc、いろいろある。そこはどう取り上げるのか?
  
中間発表前の内容は、日本人チームも多国籍チームも大して差はありませんでした。逆に、日本人チームは、多国籍チームよりも“暗黙の前提”が共有されているので、提案内容は暗黙的に日本向けになっているし、同時に、具体的でした。その一方で、多国籍チームは、ビジョンなどの抽象度の高いものはグローバルに通用する崇高な内容でしたが、提案内容も抽象度が高くなる傾向があって、その点は弱かったです(ちなみに、日本人チームの描くビジョンは、提案と同様に具体的になる傾向があって、よく言えば現実的で、ワクワク感は薄かったです)。
 
そんな傾向を持ちながらも、提案とビジョンを考える両チームの第一段階は印象としては大差無かったものの、フィードバック・タイムの後には各段に差が出ていました。

ここからは、結論に向けて少し飛躍します。
 
要は、フィードバックは大事だし、その内容を担保するダイバーシティは大事ということです。フィードバックのサイクルを健全に回せる環境をつくること。それは、中間発表の時間に限らず、そこまでのチームディスカッションのプロセスにおいても。ここに、ダイバーシティの良さを引き出すコツがあるのかもしれません。同時に、ファシリテーターの存在意義もそこにあるのかもしれないです。そんなことを感じた1日でした。