コーチングの源流はどこにあるのでしょうか。まず、日本におけるコーチングの歴史を遡ると、代表的な会社としてコーチ21とCTIジャパンの名前が出てきます。この2社は、2000年前後のほぼ同じ時期に、アメリカからコーチング・メソッドを日本に持ってきました。コーチ21はCoach Uと、CTIジャパンはCTI(The Coaches Training Institute)と提携しました。
Coach UもCTIもアメリカを代表するコーチングの会社です。Coach Uの創始者がトーマス・レナードで、CTIの創始者がローラ・ウィットワースです。この2つは異なる“流派”のように思われますが、実は同根です。トーマス・レナードとローラ・ウィットワースは、estという自己啓発セミナー会社で一緒に働いていた同僚です。且つ、トーマス・レナードが主催したセミナーの第一期生がローラ・ウィットワースで、2人の関係は良好だったようです。
すると、estとは、いったいどういう団体なのでしょうか。創始者の名前はワーナー・エアハードです。estは、1970年代にアメリカを席巻し、強引な勧誘とマインドコントロールで社会問題にまでなったようですが、ここでは深く触れません。
このestという自己啓発セミナー会社が、集団に対して提供していたノウハウを、「引き出す」という概念を軸に1on1に転用し、体系的にまとめ、“コーチング”というメソッドに進化させたのがトーマス・レナードです。その意味では、彼こそがコーチングの源流にいた人と言えるのかもしれません。
さて、「体系的ではあるものの、科学的ではない」と思われていたコーチングが、日本社会で認知と信用を得た契機は、大企業(例えば日産自動車)が管理職研修として導入したことでした。コーチング研修が日産のV字回復を支えた、とも言われています。マインドフルネスが、googleが導入したことによって社会的認知や信用を得たのにも似ているかもしれません。
そのような変遷を辿った“コーチング”は、その後も、科学的な根拠を求めて、あるいは理論的な裏付けを求めて、臨床心理学、組織開発学のセオリーを取り入れ、ポジティブ心理学、NLP、NVC等のメソッドを取り込みながら、多様に広がっていくのです。