GiFT monologue-26「コーチングにおけるマインドフルネス」

今で言う“マインドフルネス”を正式に学んだことはないのですが、20代前半の3年間毎朝、土日も休まず臨済宗の禅寺に通って「座禅」を組んでいたことがあります。20代後半には、10日間の沈黙の「ヴィパッサナー瞑想」にも行きました。30代でアメリカに留学をして臨床心理学を学んだのですが、私の通っていた大学院CIISでは、マインドフルネスは普通に使われている言葉でした。ちなみに、CIISはCalifornia Institute of Integral Studiesの略です。「東洋の思想・精神性と西洋の哲学の両方を統合していく学び」を謳っていて、トランスパーソナル心理学の総本山と言われているような場所です。また、40代には7日間の「内観」研修にも行きました。

それぞれ、似ている部分もあれば、違う部分もあって、いずれの体験も今の仕事をする上で血肉になっています。

では、それらがコーチングの中で具体的にどう活かされているのかというと…、
手法としては、ほとんど無い、というのが正直なところです。あるとすれば、臨む姿勢やあり方でしょうか。

禅寺に通っている頃、後に京都の東福寺の管長になられる遠藤礎石老子からこう教わりました。「人を水の入ったコップに例えると、座禅はコップの中の水を静めることに似ている」。つまり、暮らしの中で“コップの水”は絶えず激しく揺れ動いているから、コップの中に何があるのか見えない。座禅によって水の揺れが治まれば、自分の中に何があるのか見えてくる、ということです。

ティク・ナット・ハンの言葉だそうですが、マインドフルネスを漢字一文字で訳すと、それは「念」。念は、漢字を分解して「心の上に今を置く」ということであれば、GiFTパートナーズのセッションの質には大きく活かされているのかもしれません。セッションの最中、クライアントに、あるいは自分自身に“here and now”で起こっていることを扱うためには、今(いま)この瞬間をキャッチできる必要があるからです。

「内観」は座禅とも瞑想とも少し違う体験でした。「3つの問い」で、自分の人生を小学生のころから1年ごとに、今の年齢になるまでを振り返っていきます。1-2時間ごとに短い5分程度の面談があり、自分の気づきをただ伝えます。構造はシンプルですが、なかなか刺さる学びがありました。

いずれにしても、それらの経験を経て、自分のコンディション、つまり「呼吸」にはかなり注意を払うようになりました。

あくまでも、個人的な経験からのものですが、マインドフルネスは、息を吐いて、そして、次に吸うまでの間に広がっているような感覚があります。つまり、息を吐いてから吸うまでの「間」です。

座禅(瞑想?)をしていると時々あることなのですが、呼吸が深くゆっくりになっていって、体内細胞の活動も静かになっていって、「あれ?さっき、いつ息を吸ったかな」「いま自分は息をしているかな」と思うことがあります。息を吐いて、沈んで、自分の内面に深く降りた状態の中で、静かに、微々と腹式呼吸をしている、そんな状態です。

常にその呼吸のままに相手と向き合えたら、静かなコップのままに向き合えたら、1on1の世界に、もっと違う境地が開けてくるかもしれないのだけど…。いつも、そんなことを考えています。